戦国イベントによる地域活性化の事例5選!地域おこし協力隊も活躍!

2025.08.01

近年、地域資源を活かしたまちづくりの一環として「戦国イベント」が注目を集めています。地元に伝わる戦国時代の逸話や武将にスポットを当てたイベントは、歴史ファンや地域住民・観光客の関心を呼び、地域経済やコミュニティの活性化につながっています

最近では、地域おこし協力隊が企画・運営に関わるケースも増えています。

本記事では、「戦国イベント」「地域おこし協力隊」の概要、戦国イベントによる地域活性化の事例5選、地域で戦国イベントを開催する流れ、地域で戦国イベントを成功させるポイントとよくある課題を紹介します。

「戦国イベント」とは

「戦国イベント」は、戦国時代をテーマにした催しです。地域で開催する場合は、主に地元にゆかりのある歴史的人物や史跡、合戦などの歴史的資源を活用します。観光客の誘致や、住民の地元への愛着醸成などを目的に実施されています。

内容は武者行列や歴史講座、史跡巡りなど多岐にわたります。近年では「チャンバラ合戦」や甲冑着付け体験、戦国時代を疑似体験できるワークショップなど、参加・体験型のイベントも増えています

歴史ファンはもちろん、子どもから大人まで楽しめるイベントも多く、地域活性化の手段として注目されています。

「地域おこし協力隊」とは

「地域おこし協力隊」とは、対象となる「協力隊員」が、都市部から過疎化の進む地域に1〜3年移住する制度です。自治体の委嘱により、一次産業への従事や地域資源の発掘、情報発信などを通じて地域活性化に取り組みます。総務省が2009年に創設し、多くの地域が利用しています。

協力隊員は任期中、地域の一員として活動しながら、地域活性化に外部の視点を持って取り組みます。任期完了後も、およそ68.9%の隊員が同じ地域に定住しています。

近年は、地域おこし協力隊の協力隊員が中心となって、地域の戦国イベントを開催することも増えています。

戦国イベントによる地域活性化の事例5選

ここでは、戦国イベントによる地域活性化の事例5選を紹介します。

事例1:北海道白老郡白老町│白老町地域おこし協力隊「チャンバラ合戦 -戦IKUSA- in 白老 ~夏の陣~」

北海道白老郡白老町は、北海道中南部に位置する町です。札幌市から車で約1時間、人口約1.5万人の、海・山・川・森に恵まれた自然豊かな場所です。

古くからアイヌ民族が暮らしてきた地ですが、幕末の1856年には仙台藩が北方警備のため陣屋を置き、以後明治~大正時代にかけて開拓が進行しました。2020年にはアイヌ文化を振興するための施設「ウポポイ(民族共生象徴空間)」がポロト湖畔に開館し、注目を集めています。

白老町では2023年8月に、地域おこし協力隊主催の地域活性化イベント「チャンバラ合戦」を開催しました。スポンジの刀を使って、相手の腕に装着された「命」と呼ばれるボールを落として戦うアクティビティです。子どもも大人も一緒に汗を流すことで、自然と会話が生まれ、世代を越えた交流が促進されました。

イベントは、仙台藩白老元陣屋資料館の芝生広場で行われました。合戦開始前には、甲冑姿の館長が登場し、戦国時代のような雰囲気に参加者の士気も高まりました。

当日は120名もの参加者が集まり、大盛況となりました。白老町地域おこし協力隊の担当者も、地域の交流を促進するのに最適なイベントになったと振り返っています。

イベント概要

  • イベント名:チャンバラ合戦-戦IKUSA- in 白老 ~夏の陣~
  • 開催日:2023年8月6日(日)
  • 開催地:北海道白老郡白老町陣屋町681-4 仙台藩白老元陣屋資料館

 

参照:白老町の地域おこしイベントで「チャンバラ合戦」を開催しました! | 大人も子供も楽しめるイベント|チャンバラ合戦

事例2:鹿児島県日置市「戦国島津のまち敵中突破セミナー」

鹿児島県日置市は、薩摩半島の中央に位置する市で、約4.5万人が住んでいます。「関ケ原の戦い」で、周囲を敵に囲まれながら、敵の本陣を突っ切って撤退するという大胆な策を成功させた「島津義久」ゆかりの地として知られています。

日置市が開催した「戦国島津のまち敵中突破セミナー」は、地域おこし協力隊の募集開始記念に行なわれたセミナーです。ゲームアプリやメタバースなどデジタルな施策に取り組む人材や、インバウンド観光に取り組む人材を募集するため、有楽町の東京交通会館で実施しました。

当日は、日置市からやってきた戦国武将と参加者が交流したり、VRChat内のワールド「ネオ日置」で流鏑馬体験をしたりと、過去と現代が交差する特別な経験ができる場となりました。

町おこしや地域おこし協力隊についてなど、さまざまな意見を交換する「軍議」も行い、今後の日置市について真剣に考える機会になりました。地域への理解と愛着を深める場となりました。

イベント概要

  • イベント名:戦国島津のまち敵中突破セミナー
  • 開催日:2025年5月17日(土)
  • 開催地:東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館8階 ふるさと回帰支援センター セミナールームC

 

参照:「歴史×デジタル」でまちづくり/ 戦国島津のまち敵中突破セミナー | かごしま移住ネット

事例3:岐阜県可児市「戦国城跡巡り事業-可児市の乱-」

岐阜県可児市は、岐阜県の中南部・木曽川南岸に位置する、人口約10万人の市です。戦国時代の名将・明智光秀の出生地として知られています。市内には光秀ゆかりの明智城跡をはじめ、土岐氏や斎藤氏といった戦国大名の勢力が交錯した多くの城跡が10箇所点在します。

岐阜県可児市が2016年から展開した「戦国城跡巡り事業‑可児市の乱‑」は、城跡や市内のさまざまな場所を舞台に「チャンバラ合戦」やワークショップ、史跡ガイドなどを複数回行いました

チャンバラ合戦に市民約1万人(人口の10%)が参加することを目標として実施され、市民も恒例イベントとしてチャンバラ合戦を楽しみました。住民参加型の地域活性化事業として注目するべき事例です。

イベント概要

  • イベント名:戦国城跡巡り事業-可児市の乱-
  • 開催日:2016年11月6日(日) 他複数回
  • 開催地:岐阜県可児市土田2352-2 土田地区センター 他複数

 

参照:【地方創生】世界初、岐阜県可児市がチャンバラを使い、新しい地域活性化「戦国城跡巡り事業-可児市の乱-」を本格始動。 | 可児市役所 観光交流課のプレスリリース

事例4:埼玉県行田市「チャンバラ合戦 in 忍城 ~行田花手水タウン特別企画2024~『歴史は塗り替えられるのか!?』」

埼玉県行田市は、埼玉県の北部に位置する、人口8万人の市です。市内には、国宝「金錯銘鉄剣」が出土した稲荷山古墳や、日本最大級の円墳である丸墓山古墳など、9基の大型古墳が集まる「埼玉古墳群」があります。室町時代には忍城が築かれ、関東制圧を目指した石田三成の水攻めに耐えた「浮き城」として知られています。

行田市で開催された「チャンバラ合戦 in 忍城 ~行田花手水タウン特別企画2024~『歴史は塗り替えられるのか!?』」は、忍城をより多くの人に知ってもらうことを目的に行われた戦国イベントです

舞台となる忍城の歴史を背景に、チーム対抗の「チャンバラ合戦」が繰り広げられ、老若男女が一体となって盛り上がりました。また「オリジナル刀作り」のワークショップも行いました。

イベント概要

  • イベント名:チャンバラ合戦 in 忍城 ~行田花手水タウン特別企画2024~「歴史は塗り替えられるのか!?」
  • 開催日:2024年9月21日(土)
  • 開催地:埼玉県行田市本丸17-23 忍城址公園

 

参照:忍城前広場にて「チャンバラ合戦」「戦国ワークショップ」を実施しました! | 大人も子供も楽しめるイベント|チャンバラ合戦

事例5:埼玉県北足立郡伊奈町「忠次公レキシまつり」

埼玉県北足立郡伊奈町は、埼玉県の東部に位置する、人口4.5万人の町です。江戸時代に関東郡代として活躍した伊奈忠次の本拠地です。伊奈氏は治水や新田開発に尽力し、利根川の流路変更など関東のインフラ整備に大きな功績を残しました。

伊奈町で開催されている「忠次公レキシまつり」は、伊奈忠次の功績を称える戦国イベントです。伊奈氏の屋敷跡の周辺を活用し、2018年に始まりました。主催の忠次プロジェクト推進協議会は、伊奈町観光協会が実施しているプロジェクトです。

「チャンバラ合戦」、かんざしや万華鏡づくり・流鏑馬射的などを楽しめる「戦国ワークショップ」、芋ほり体験、地元農産物販売、史跡ガイド、スタンプラリーなどが行われています。

毎年恒例のイベントとなりつつあり、回を重ねるごとに、地域住民や歴史ファンの注目を集めています。

イベント概要

  • イベント名:忠次公レキシまつり
  • 開催日:2023年11月12日(日)
  • 開催地:埼玉県北足立郡伊奈町大字小室191 頭殿権現社敷地内およびその周辺

 

参照:「2023忠次公レキシまつり」にてチャンバラ合戦と戦国ワークショップを実施しました! | 大人も子供も楽しめるイベント|チャンバラ合戦

地域で戦国イベントを開催する流れ

ここでは、地域で戦国イベントを開催する際の流れについて紹介します。

1.地域資源を洗い出しテーマを設定する

まずは、地域の歴史的背景や伝承、戦国武将に関する情報を収集します。地元にゆかりのある武将や合戦跡、城跡などから、より多くの人を惹きつけられる資源を選定し、それを軸にしたテーマ設定を行います。例えば、

  • 「合戦を再現する参加型イベント」
  • 「戦国時代の暮らしを体験するワークショップ」
  • 「戦国武将の活躍を称える武者行列」

 

といったテーマが考えられます。地域住民の思い入れや郷土愛を刺激する要素を加えると、参加意欲が高まります。

2.運営チームをつくり役割を分担する

続いて、運営メンバーを集めます。地域おこし協力隊、自治体職員、観光協会、商工会、学校関係者、町内会などから、地域活性化に関心のある人材をを巻き込みましょう。それぞれの得意分野を活かして、お互いに協力しあうことが重要です

自分たちだけでイベントを行うのが不安であれば、ノウハウのあるイベント会社を利用してもいいでしょう。

3.企画内容とタイムスケジュールを決める

次に、イベントの企画内容を決めます。テーマ設定時に骨子はできているため、詳細を詰めていきます。どんな人に何人集まってほしいのか、来場者はどのような流れで過ごすのか、出演者やスタッフはどの程度必要か、具体的にイメージを膨らませ、企画に落とし込みましょう

メインイベント以外にも、ステージでパフォーマンスを行ったり、写真撮影ポイントを用意したりして、来場者が飽きない工夫をすることで、満足度の高いイベントが実現します。茶屋やキッチンカーで地元グルメを提供するのもおすすめです。

企画内容が固まったら、当日のスケジュールを決めます。設営から撤収まで、無理なく行えるスケジュールを組みましょう。

4.広報戦略を決め告知を行う

企画が決まったら、広報を行います。どんなに魅力的なイベントでも、来場者が集まらなければ成功とは言えません。ターゲット層に合わせて情報を広めましょう。以下のようなツールを活用しましょう。

  • ポスター・チラシ
  • イベント告知サイトへの情報掲載
  • SNS(InstagramやTikTok、Xなど)への情報掲載
  • 地域メディアへの取材依頼

5.当日の運営を行う

当日は、参加者の安全確保とスムーズな運営が求められます。運営スタッフ向けにタイムスケジュールを共有し、必要に応じてリハーサルも行います。

交通誘導、救護対応、熱中症対策など、トラブルは事前に想定して、対応フローや担当者を決めておきましょう

6.終了後に振り返り次年度へ継承する

イベント終了後は、スタッフや参加者の声を集め、成果と課題を整理しましょう。振り返りの報告書や、記録用の動画・写真を残しておくことで、次年度以降のスムーズな開催につながります

地域で戦国イベントを成功させるポイント

ここでは、地域で戦国イベントを成功させるポイントを3つ紹介します。

1.地域の歴史や文化をテーマに活かす

イベントのテーマは、地元にゆかりのある戦国武将や史跡を題材にしましょう。それによって地元ならではの物語性が生まれ、他の地域との差別化につながります

近年では、NHK大河ドラマや映画・漫画・ゲームなどの影響で、それまであまり有名でなかった人物やスポットに注目が集まることもあります。情報収集はこまめに行いましょう。

2.継続性を見据えて運営する

イベントをゼロから立ち上げるのは大変ですが、恒例となれば準備を省力化でき、繰り返すことで企画をブラッシュアップできます。また、毎年お馴染みのイベントになれば、地域住民や観光客にとってより親しみがわくものになります。

イベントを開催するのであれば、今後も継続的に実施することが重要です。イベント後に振り返りを行ったり、運営スタッフが長く関与できるように関係性を築いたりして、次に繋げる工夫をしましょう。

3.組織外の人材と連携する

イベント開催にあたり、自分たちだけですべてを行おうとせず、外部の人材にも積極的に協力をあおぐことも重要です。企画や集客・当日の運営など、ノウハウがある人材の知見を得ることで、イベントのクオリティを上げ、自分たちの負担を軽減することができます

地域で戦国イベントを開催する際のよくある課題

1.一部の人に負担が集中する

イベントを開催する際に、一部の人に業務が偏るのはよくあることです。しかし、それによって情報共有が滞り運営がスムーズに進まなくなったり、モチベーションが低下して継続的にイベントに携われなくなったりします。タスクの明確化やマニュアル作成・外注などを適切に行い、役割分担をすることが重要です。

2.企画に新鮮味がなく参加者が減少する

イベントを開催しても、他の地域との差別化がはかれていなかったり、参加者が楽しめる要素がなかったりすると、参加者が集まらない可能性があります。地域に根ざしたテーマ設定や、参加型・体験型のアクティビティを導入するなどして、参加者の思い出に残るイベント企画が求められます。

3.史実と演出のバランスがとれていない

戦国イベントでは、史実に基づいた内容を重視すると面白みに欠け、一方で演出を重視すると史実からかけ離れてしまうことがあります。歴史的な事実を踏まえながら、「if」のストーリーを盛り込むなど、バランスの取れた企画が求められます

まとめ

戦国イベントは「地域の物語」を再発見する機会となります。地元に残る戦国時代の史跡や、戦国武将のエピソードは、地域に興味と誇りを持つきっかけになるでしょう。

近年は参加型・体験型のイベントも増えており、大人も子どもも楽しめる機会となっています。また地域おこし協力隊が運営をし、新鮮な視点でイベントを行うケースも見られます。

この記事を参考に、地域で戦国イベントを開催してみてはいかがでしょうか。

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